私の友達が、
「やられちゃったよ」
と言ってやってきました。
一体、何をやられたのかと聞きました。
友達は、介護の必要な少し認知症のある母親と暮らしています。
毎週水曜日に母親を病院に連れていっています。
それで、お嫁に行った娘さんが、ときどきお家にお手伝いに来てくれます。
この前は、娘さんが冷蔵庫のお掃除をしてくれました。
すごくきれいになって感謝していました。
それで、「ふっ、ふっ、ふーん」と良い機嫌で冷蔵庫を開けました。
冷蔵庫の中はきれいになっていました。とってもきれいになっていました。
きれいになりすぎて、あれがないのです。
「あれって?」
「あれは、あれですよ」
「楽しみにしていたあれですよ」
「引っ張らないでいってください」
「しじみの干物がないんです。大枚叩いて買ったのに」
「これね、しじみの干物をお湯で戻して、麺つゆみたいなだしがあるでしょ。これを3倍に薄めて両方を炊きたてのご飯にぐるぐる混ぜるでしょ。するととっても美味しいしじみご飯が出来上がるのです。
母親と、一緒に食べるの楽しみにしていたのに。あーあ!」
どうやら冷蔵庫の中古くなった食材の残りか何かと間違えて捨てられたようです。
「娘さんに言ったの?」
「娘は、『ないものはない』とあっさりしたものです。あーもう、ショック!」
さらに、
「もう、全然古くないのに。ちゃんとふたして冷蔵庫に入れてたら半年は持つのに。カンカンに入れて乾燥剤を入れておいておけば2年は持つのに。しじみご飯美味しいのに。うーん。ぶつぶつ」
すごく落ち込んでいる彼に
「今度、その美味しいしじみご飯を作って娘さんに食べさせてあげたら、それで自分が何をしたかわかるはずだよ」
と言いました。
「そうだね。あのしじみご飯の美味しさがわからないから。自分のショックが伝わらないんだ。娘に食べさせよう」
私にもそのしじみご飯の美味しさを味あわせてほしいなと思いました。
教えてあげる
ゴミに見えても宝物がある
教えてください
美味しいもの
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